松井 菜穂子 Soprano
中文 English  
トップページ 最新情報 プロフィール インフォメーション リポート レパートリー CD ヒストリー お問い合わせ


※これまでのレポートは「History」のページでご覧いただけます。

11月8日(水)

 昨年(‘05)に続き2回目となる独唱会のために上海に入りました。今回は日本からいらっしゃるお客様と多くの時間を過ごしたく上海花園飯店(オークラホテル)に泊まります。

別便で到着したピアノの梶浦さんとはホテルで合流しました。10日に日本から来てくださるお客様をご案内する予定のレストランで下見を兼ねて夕食をとりました。上海の葉さんの推薦の通りホテルから近く、安くて美味しいのでこの店に皆様をお連れすることに決定しました。

11月9日(木 )

 

 私たち演奏家にとって、どの国へ行っても真っ先に気になるのが練習場の確保です。ピアニストなら良いピアノの確保。声楽家もピアノは重要ではありますが更に気になるのが響きの良い練習場を確保することです。これが簡単なようで案外難しいのです。なぜかといえばピアノを置いてある場所には程度の差はあるものの防音処置が施してあるのが殆どで、この防音処置が部屋の響きを悪くします。響きの悪い部屋で練習をすると喉への負担が大きくとても疲れますし、ひいては間違った発声方法が身についてしまう原因になります。日頃私が伴奏合わせをピアニストの家でやらず自宅にピアニストに来ていただくようにしているのもこのような理由からです。

東京ではこれで問題はありませんが、外国では思うようにゆかず苦労いたします。昨年(2005年)の時は上海音楽院を出てすぐの所にある柏斯琴行(パーソンズ)という楽器店が経営している練習室の中にある小さな演奏会場を使用して練習したのですが目下音楽院とその周りは大規模な工事中でこの楽器店の建物も取り壊されています。困り果てていたところへ助け舟を出してくださったのは以前から親しくさせていただいている上海音楽院の陳其蓮教授(ソプラノ声楽家)でした。音楽院のレッスン室を1部屋私のために学校から借りてくださいました。
今年も音楽院の中に大きな私の看板が出ています。
ピアニスト梶浦 晃代さんと。

午後1:30からここで梶浦さんと練習することが出来ました。


11月10日(金)

 今日は少し早起きして午前中のコンサートに備えます。10:00ホテルを出発し第八回上海国際芸術際『天天演』会場の南京路世紀広場に向かいます。南京路というのは言ってみれば銀座の『歩行者天国』のような感じ(こちらは365日ずっと歩行者天国ですが)の所で、両側にはデパートやレストラン等のお店が並ぶ広い路で、中国の人達は車を全く気にせずにぶらぶら出来るのです。(歩行者天国を行っているのは、南京路の東路の方です。)この歩行者天国の中ほどの世紀広場に常設されている野外舞台があり、ここで国際芸術祭の期間(10/18~11/18)連日11:00~12:00様々なパフォーマンスが繰りひろげられます。

 昨年コンサートの2日前にこの『天天演』で歌う機会を上海演出公司が作ってくださり、そのお陰で私は第八回上海国際芸術祭のエントリー資格を得ることが出来ました。エントリー資格ができたとは言っても上海国際芸術祭には世界中の様々なジャンルの有名な方々が名乗りをあげていらっしゃる訳ですからとても私が選ばれるとは思えなかったのですがお蔭様で今年のコンサートは参加作品として取り上げて戴けることとなりました。本当に上海演出公司の皆様には感謝申し上げております。

 昨年の『天天演』ではもう一つ嬉しいことがありました。『天天演』ではチケットの販売は禁止されていますがチラシは配ってもOKということで私の歌う間路上で演出公司の方々がチラシを配ってくださったのですが・・・何と! その日の午後チケットセンターで私のコンサートのチケットが完売してしまったのです。
  全く見も知らぬ外国人である私の為に、しかもその場でチケットを売ったというならまだしも、わざわざチケットセンターまで足を運んでくださったのには驚くとともに感激で心が打ち震えてしまいました。中国での第一声を発した思い出深いこの舞台に又こうして戻ってまいりました。昨年の感動がよみがえります。
 
  しかし感傷に浸っている余裕はありません。なにしろ舞台裏は戦場のような混乱振りです。7歳年上の姉と2姉妹で育った私は競争するということにかけての訓練が全く出来ておらず、そのせいで特にこの中国では“飛び切りドン臭いヤツ”になってしまうのです-------例えばバスや地下鉄で先頭に並んでいるのにもかかわらず1番最後からしか乗り込めないとか、目の前の座席が空いても何故か他人に先に座られてしまうなど数え上げたらキリがありません。ですから私のためにと用意された椅子は別の人に持ち去られ、荷物を置いていたところにはいつの間にか他人の楽器ケースが上から山のように積み上げられ・・・・という具合でただオロオロするばかりです。
 
  根っからの『おっとりさん』の梶浦さんはオロオロもできなくてただ呆然としているようです。でもこの混乱と喧騒こそが中国らしさであり私が中国を愛する理由でもあるのです。人は自分にないものに憧れるというではありませんか・・・・。“今年は松井さんのために白いピアノにした”というピアノがステージに押し出され司会者の方の紹介に続いて11:25に登場です。
天天演のお客様 天天演で歌う

 まず最初の曲は『ともしび』です。
  1番は中国語で、2番はロシア語で歌います。2曲目は日本を代表する『さくら、さくら』です。日本の桜の美しさを中国語で語ります。3曲目は中国の歌『燕』この曲は新疆の民謡です。最後の曲はモーツアルト(生誕250年ですから)『アレルヤ』です。
  今年も沢山の方が足をとめて私の歌に聞きいってくださいました。胸が熱くなります。この場を与えてくださった方々に、聞いてい下さった方々に感謝してステージから降りました。




出演者賞を頂く
 そして、もうお一方に深く感謝です。この風のなか譜めくりをしていただいた峯田明子さんです 。
  譜めくりは誰にでも頼めるという訳にはいきません。譜面が読めることは無論のことご自分でもピアノを弾きこなす方でないと頼むことは出来ません。なかなか良い方が見つからず困っておりましたところ、峯田さんが快く引き受けてくださいました。
  峯田さんとの出会いは2005年6月彼女が自宅で開催された“フレンド オブ ホープ シャンハイ”というチャリティーコンサートを聴きに伺ったときです。中国の恵まれない子供達の医療費を集めるためのチャリティーコンサートをご家族全員で取り組まれている姿に心から感心し、2006年6月のチャリティーコンサートには峯田さんの伴奏で参加させていただきました。
06年06月チャリティーコンサートより
ピアニスト峯田明子様
 そしてこの日の午後の練習場所は峯田さんのご自宅です。前日夜遅くにボストンから戻られた(お嬢様方がバークリー音楽院へ留学中のため)ばかりにもかかわらず、長旅の疲れも見せずにご自宅を提供してくださったのです。





峯田さんのご自宅

 気分良く練習し夕方のラッシュに巻き込まれずにホテルへ取って返しました。 今日は東京から何人かのお客様が到着なさいます。飛行機の到着は夕方なので7:00頃になりそうです。
 上海の朝と夕方のラッシュは東京でのラッシュになれている私でもウンザリしてしまうほどです。お客様がお疲れでないと良いのだけれど・・・ずっとロビーにてお待ちします。
  アッ!到着なさいました。皆さんわりとお元気そうで良かった・・・・チェックインを済ませて頂き8日に下見をしておいたレストラン「荷軒」へご案内します。



荷軒にて
後列左から2人おいて佐藤 勝様ご夫妻、、私、鳥居 久道様ご夫妻、
前列大川 一廣様ご家族
テーブルを囲んでこの度初めて出会われた方たちもすぐにお互い打ち解けて楽しくお食事は進みます。皆様には旅の疲れを癒していただくため、私は明日のコンサートに備えるため話は尽きませんがそろそろお開きです。

11月11日(土)
 
いよいよコンサート当日を迎えました。梶浦さんも私も“晴れ女”今日もお天気に恵まれました。日本からこられたお客様はコンサートの始まるまで各々ツアーに参加していただきコンサート会場へは上海の青山ローレル総経理 葉 積鳴が仕立てたバスで皆様をご案内します。

 私たちは夕方4:00にホテルをでて会場へ向かいます。峯田さんには本日も引き続き譜めくりをお願いしました。会場に着くと昼に別のイベントを開催していたとかでまだ片付いておらず急いで片付けているため埃がモウモウと舞い上がっています。本番までにこの埃が鎮まることを願います。

 〇コンサート前半

 7:30いよいよ舞台へ出るときが来ました。最初の曲はサンサーンス『バラとうぐいす』です。
  この曲を1曲目に選ぶことができたのはやはりなんと言ってもこのホールの響きの良さを信じているからです。
 
  一曲目を歌い終わった所でマイクを持ちまずは中国語でご挨拶です。
  昨年に比べると少しは上手く喋れるようになったかな・・・?
  10月の瀋陽の時はまわりが皆美しい普通語(中国語の標準語のこと)を話すのでかなり緊張しましたがここ上海では余り厳密に声調など気にしない雰囲気があるので少しは気楽です。・・・・とは言うものの話が全くお客様に通じないようでは話す意味がありませんので気をつけて話します。実は歌の合間に“喋る”という行為を挟むのは喉への負担も大きく楽なことではありませんし、ましてや中国語となると本当に大変な負担ではありますが、歌を通じての日中友好にはどうしても欠くことのできないことです。
  又“お喋り”は私の「親しみやすいクラッシクコンサート」をというライフワークの一環のなかではお客様との意思疎通を図る上で大切なものです。ですから、日本と同様に中国でも少々下手でも中国語で頑張って司会をこなします。

  2曲目は中国歌曲『バラの3つの願い』、3、4曲目はロシヤ民謡から『ともしび』『なつかしきヴォルガ』を、5曲目はバッハ『G線上のアリア』をヴォカリーズで歌う私のオリジナル曲、6曲目はモーツァルト『アレルヤ』、前半最後は前回の上海公演で好評だった『うぐいす』を歌いました。

〇コンサート後半

後半第1曲目は中国歌曲『銀色の月の下で』2曲目は梶浦さんの編曲『蘇州夜曲』3曲目は再び中国歌曲で『燕』
  4曲目は『ホフマン物語』からオランピアのアリア『森の小鳥は~』
  この曲は機械仕掛けの人形オランピアが歌う曲で、途中ネジが緩んで歌が止まりかけ人形を製作した博士があわてて駆け寄りネジを巻き直すと又人形が歌い始めるという大変面白い曲です。ところがネジを巻き直す博士を誰に頼むか散々悩みましたが、なかなか良い方が見つからず困っていましたら、梶浦さんが素晴らしい案を見つけてくださいました。「ナオちゃん今時だからネジではなくてリモコンはどうかしら・・・これだったら私がピアノに座ったまま出来るでしょ!」私はこの名案に早速飛びつきました。この曲ではネジの緩む場面が2回出てきます。1回目はすぐに動き出し、2回目は中々リモコンが作動せず散々やってやっと歌いだすという演出で行くことに決定しました。
 これは大いに受けて?・・・・皆様大笑いです。
  しかしあまり派手にやり過ぎて梶浦さんがピアノから離れてリモコンを動かし・・・・これが思わぬ落とし穴でした。人形が動き出すや否やすぐピアノに戻って弾き始めなくてはならないのですが、1回完全に楽譜から目が離れてしまっている梶浦さんにしてみれば、これはちょっと気の毒でした。ピアノに戻ったとき彼女の目が捉えていたのは1ページ前の楽譜!
でも数小節の混乱の後すぐに戻ってなんとか無事に・・・やれやれでした。やはり舞台には魔物が棲んでいます。


お人形になりきってます。

 これが本番生の面白さかも知れません。もっとも後から聞いたところお客様は誰も気が付いていなかったようですが・・・。
 
  この後日本の歌から『赤とんぼ』『さくら さくら』を歌い、梶浦さんの編曲した『さくら さくら』のピアノ独奏が続きます。そして最後の曲は『椿姫』から有名なアリア『ああ そは彼の人か~花から花へ』です。このオペラは中国でも大変人気のあるオペラです。

 

 

今回も沢山のお客様(しかも大部分は中国の方々)にお越しいただくことが出来て本当に心から感謝しています。
  感謝の気持ちを込めてアンコールは『La Perichole』(通称「酔っ払いのうた」)です。

 アレルギーで1滴もお酒は飲めない私ですが・・・これは私のアンコールの十八番です。歌詞はフランス語ですが言葉と関係なく毎回日本のお客様も喜んで聞いてくださいます。中国のお客様にも大いに受けたようでよかった!!

 

上海銘酒“石庫門”で酔っ払ったかなー

 

 最後はマイクを持って客席に降りて『同一首歌』を歌いました 。

 昨年は客席に降りて『夜来香』を歌ったのですがお客様の声がいまひとつ小さかったので今年はプログラムの中に『同一首歌』の歌詞を挟みこみました。

 そのせいか、あるいはこの曲だからか分かりませんが今年は会場が大合唱となり本当に嬉しかったです。
  来ていただきましたお客様全員と握手したいところですがそういうわけも行かず(それでも多くの方と握手させていただきましたが・・・)名残り惜しいけれど今年はこれでお終いです。

 楽屋に多くの方がいらして下さいました。
  日本のコンサート会場のように退出時間が厳格に決められていてお客様とゆっくり話もできない・・・などということはこの大らかな大陸では考えられないことで私もゆっくりとあわてずに話ができました。
  ・・・とは言っても演奏後の興奮を引きずるボンヤリとした頭でたぶん色々失礼があったこととここにお詫び申し上げます。
  ともあれ沢山の方々に支えられて無事公演を終了でき心より厚く御礼申し上げます。

11月12日(日)

 コンサートが終わった翌日、買い物ツアー、上海1日観光、中国家具と玉細工の工場見学と3つのツアーに分かれました。
  私は買い物ツアーの添乗員に早変わりして、私が上海へ来ると良く利用するお店を中心に皆様をご案内しました。 上海での買い物は中国の人の特色がよく出ていて非常に面白いです。日本で言えば大阪の商法に一番似ていると思います。中国の人でその定価通り品物を買われる方はまずいません。値切るのです。私は東京育ちですので物を値切って買ったことはあまり記憶にありませんが、ここ上海では、買い物はまず値切ることを覚える所から始めました。
 
  私「那 个 多少 銭 ?」お店の人「3百元」私「太 貴 了!!」これを訳せば「あれいくらですか?」「300元です。(日本円で4,500円です。)」「高すぎる。」となんでもなく聞こえると思いますが、最後の高すぎるを、中国語で「タイ クイ ラ!!」とできるだけオーバーに表現し愛嬌を振りまきながら買い物を値段交渉も含めエンジョイすること。度胸だけではだめです。必ず愛嬌とセットにすることこれが中国で買い物を楽しむコツです。

そして夜は皆様を昨年もご案内した虹橋にあるレストラン“銀夢”へお連れしました。このレストランの経営者は青山ローレル中国総経理の葉 積鳴さんの義兄です。
  11月は上海蟹の美味しい季節ですから日本からいらしたお客様には是非とも本物の上海蟹を召し上がっていただきたいのですが、良く知らないお店でうっかり上海蟹を食べようものなら“何!これ”という代物が出てくることもありますので、やはり中国の人たちに“評判の店”で食べるのがお勧めです。

そのためには私のように日頃から中国へ行きある程度顔が利く人と一緒に食べに行くことが美味しく食べられる秘訣です。
  2年続けていらっしゃって下さるお客様には申し訳ない気もしましたが、その様な訳で今年もまたこのお店にご案内させていただきました。お一人で5捭の上海蟹を召し上がった方もいらして良かった、良かった。
  お腹が一杯になりすぎて辛い思い出とならぬよう、でも心行くまで召し上がってくださいネ。

 

左から大坂千世様、一人置いて源馬邦子様、亀山正子様
左から陳先生の従兄弟様、峯田裕之様,厳菊芳様、私、
    許楚白様、陳其蓮先生、峯田明子様、綱島薫様
葉様ご一家

1月13日(月)

 日本からのお客様の多くは今日帰国の途につかれます。皆さんが楽しかったと笑顔を残して乗り込まれた車がホテルの門を出て視界から消えるまで手を振り続けました。どうぞこの先も安全で良い旅を!!そしてまだ上海にのこっていらっしゃるお客様と14日までご一緒させていただき、にわか添乗員として奮闘しました。


後列左から
亀山正子様、源馬邦子様、私、
前列豊田 勲ご夫妻


 この後上海でお世話になった方々へ挨拶回りをしました。
  10月の瀋陽における演奏会でピアノの伴奏をしてくださった李青先生が私のコンサートのために瀋陽からわざわざいらっしゃってくださり、その上食事の席まで設けてくださいました。
 陳其蓮教授の上海音楽院の生徒さんの試験を見学させていたり、少しづつですが音楽関係者の方達との交流の機会も増して本当に嬉しく思いました。

左から李青先生、私、李先生のお母様と友人たち
 又私が上海のパパ、ママと言って甘えさせていただいている許楚白、厳菊芳様ご夫妻のお宅に今回も伺い美味しいランチをご馳走になりました。
左から許楚白様、私、厳菊芳様 ワンタンの包み方も教えていただきましたが意外と難しかった!

 そして新疆オペラ“氷山上的来客”を見たり、第八回上海国際芸術祭閉幕式に参加してミラノスカラ座バレエ公演“真夏の夜の夢”を見またが、昨年度第七回閉幕式演目(日本にも06年7月~8月にかけて来日し話題になった雑技“白鳥の湖”です。)があまりに素晴らしかったので今年はちょっと拍子抜けでした。

又これらの合間をぬって上海大劇院に隣接するCDショップへ私のCD(9月上海で録音)がどのように売られているかを見に行ったり、今後の活動に備えて本屋さんや楽譜専門店を駆け巡り色々な楽譜を買い求めてきました。

新疆オペラ“氷山上的来客” 大劇院での芸術祭閉幕式 CDショップ

 今年度の第三回上海公演の日程は07年11月10日(土)と早くも上海演出公司が決定し又この日に向かって準備を進めてゆかなくてはなりませんが、ひとまず日本に戻って12月のコンサートのための準備をすることに。

活気溢れる街、上海ともしばしのお別れです。   再見!!

これまでのレポートは「History」のページでご覧いただけます。


このページのトップに戻る▲



(c) 2003-2006株式会社 青山ローレル all rights reserved.